Joe / Bridges |
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Joeの1年ぶりの11作目。レビューするのは5年ぶりとなるが、そんな歳月を感じさせない、いつものJoeらしいアルバムである。流行とは完全に縁を切って、聞いて気持ちよいR&Bに徹しており、吹っ切れているという感じである。既にベテランではあるが、Sentialな歌詞の曲も多く、声も若々しい。Produceを人に任せ、自分はVocalに集中しているようだ。曲数が多いので同じような曲調のTrackもある気がするが、アップ?ミディアム?スローがバランスよく構成され、節目に聞きごたえのある曲が配されていて、うまく工夫してると思う。 |
Jessie Ware / Tough Love |
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デビューアルバムが高評価だったJessie Wareの2年ぶりとなる2nd。前作の好調さを維持しつつ、BenZelをExecutive Producerに迎え、より、Popで、瑞々しさが感じられる作品になっている。婚約もしたこともあって、明るい曲調のTrackも多くなっている。また、バンドが主体となって、Electro感もなくなった気がする。Miguel、Devante
HynesやEd Sheeranも曲作りに加わり、Gospelやラテンの要素もアクセント的に加わって、多彩になったが、JessieのVocalがより鮮明にフィーチャーされているのも特徴的だ。 |
August Alsina / Testimony |
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New Orleans出身でATL在住のR&Bシンガー、August Alsinaのメジャーデビューとなる初フルアルバム。兄の死を機にDrug
Dealerから足を洗い、音楽の世界に転身してからは比較的すぐにリリースにこぎつけたとのこと。10代のころ、Musiq SoulchildやLyfe
Jenningsをカバーして、Youtubeで話題になったらしく、物騒なキャリアを持ちながら、音楽の方向性は至って正統派のR&B作品になっていて、JOEやR.
Kellyあたりに近いと思う。Vocalは若手特有の線の細さもあまりなく、高音の使い方がうまい。メジャーなRapperをGuestに多く迎え、そこはアクセントになっているが、全体的に哀愁漂うスロー曲が多く、ちょっと単調になっているのが残念。曲数を絞っても良かったのではないか。 |
Theophilus London / Vibe! |
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トリニダード・トバゴ生まれのRapper、Theophilus Londonmの3年ぶりの2ndアルバム。現在はNY在住だそうで、Kanye
WestがExecutive Produserを務め、Guestとしても1曲に参加している。Hip-Hopのアルバムにしては、かなりバラエティに富んでいるのが特徴的で、最初のほうは今どきのアンビエント・エレクトロ路線かと思ったが、R&B,
Regae, Pop, Rockと様々な要素を取り入れたTrackが続く。全体的に重苦しさがなく、本人は唄もうたったりして、軽妙な印象を受ける。コアなHip-hopというより、Pharellに近いPopでStylishな路線と言えそうだ。 |
Tinashe / Aquarius |
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女性R&Bシンガー、Tinashe 21歳のデビュー作。女優やTeen Pop Groupでの経験を経て、ArtistとしてはMixtape等で活動してきて、メジャーデビューに至った。美人だけにモデルの経験もあるという才色兼備な人だ。アンビエントでゆらゆらとした曲調のTrackが多く、Tinasheの透きとおって、囁くような声がMixされ、独特な浮遊感を醸し出している。より普通っぽいHip-Hop
SoulやPopな曲もあるが、同じような印象を受けてしまう。Guestには、最近売れている人たちを起用し、デビューから、しっかりと(売るために)作られたアルバムになっている。 |
Vince Staples / Hell Can Wait |
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Long Beach出身で、3人組Hip-Hop GroupのCutthroat BoyzのメンバーでもあるVince StapleのデビューEP。Def
Jamより、Digitalのみでのリリースである。Odd FutureやMac Millerなどとの活動で知られていたが、本人名義での作品となる。やや暗めでディープなTrackにリアリティあるライムがのっかる、Hip-Hopとして基本に近いスタイルで、淀みないフローは巧みである。実力はわかったので、次回アルバムを期待したい。 |
Mary J. Blige / The London Sessions |
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企画物2枚をはさんで、3年ぶりとなるオリジナル作。Disclosureとの共演を経て、そっち方面に関心を持ったMaryがRodney JerkinsとLondonに乗り込んで一ヶ月で作り上げたという作品。他にも今が旬のSam
Smithが4曲でコーラス参加したりと、UKよりGuestを迎えている。PianoやGuiter、Stringsなどを用いた、いかにもLondon的なアコースティックなバンドサウンドのスローな曲が多く、その中でも最初の4曲目までが特に素晴らしい。Vocalが本当に染みてくる。一方、Disclosureと組んだ2曲を含めた、エレクトロな数曲は凝ったつくりで、これはこれで面白く、いつものHip-HopなMaryのVocalが聴ける。自身の痛いところまで曝け出すこれまでのMaryに対し、今回は、楽曲そのもに集中していると感じられるが、UK訪問含めて、挑戦は成功してると思います。 |
Young Thug & Bloody Jay / Black Portland |
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Gucci Mainの1017 thugに属するATL出身のRapper, Young Thugが同郷のBloody JayとリリースしたMix
Tape。そんなわけで自己制作感の強いTrackはサウスらしいバウンシーな印象なのだが、シリアスな雰囲気を持つものが多く、また、変わり者らしいYoung
ThugのひしゃげたRapが相俟って、かなり特異な雰囲気を醸し出している。2013年ころから名前を聞くようになったが、Kanye WestやDrakeも注目しているそうで、今後が期待できそうな人達である。 |
FKA Twigs / LP1 |
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London在住でJamaicaとSpainのハーフのTahliah Barnettによるユニット、FKA Twigsの初アルバム。 Producer,
singer, songwriter, video director,バレリーナ、振付師などマルチに活躍している人なようで、当作でもSong
Writingと一部Produceを担っている。全体的にはエレクトロでアンビエントな印象のダブっぽい、ゆったりとした曲ばかりで、囁くようで儚げな声のVocalが特徴的。いかにもUK的なアルバムといえるし、敢えて例えるならBjorkか。あまり抑揚がないので、40分の短編で良かったかもしれない。今年の目玉的な作品ではあるが、万人受けするものではなさそうです。 |
Luke James / Luke James |
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New Orleans出身のSinger, Song Writer, Luke Jamesのデビュー作。Danjaの後ろ盾を得て、曲提供やシングルのリリースなどを行い、2012のGrammyノミネートまでされた人で、満を持してのアルバムデビューと言っていいだろう。スロー中心のTrackは茫洋としてアンビエントで、凝った作りではあるものの、懐かしく、血の通った印象もあって、結構、個性的。何度も聴きたくなる深みがある。ファルセットを多用し、静か目に丁寧に唄う唄も、自身の作る曲にとてもマッチしている。楽しみな新人が出てきたなと思う。 |
Jennifer Hudson / Jhud |
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Jennifer Hudsonの3年ぶり3作目。CDジャケットを見ると、体型がスリムになったようだが、アルバムの方向性も変化している。今回は、特に前半、ダンサブルでポップな曲が多くなっており、特にPharrellが3曲Produceし、しっかり、今時のR&Bになっている。ただ、そんな中でもR.
Kellyとの共演となるAはオールドスタイルだがスムースで気持ちよい。Mali Musicが関わる8曲目以降は、今まで路線のスローが続き、JenniferのVocalの魅力が引き出されている。一粒で2度おいしいみたいな、作品です。 |
Ariana Grande / My Everything |
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デビュー作が好評で、日本でも人気のAriana Grandeの2作目。前作から短い間隔でのリリースは波に乗っている証拠である。前作は90年代R&B的でPopな感じが受けたのだが、今回はEDMっぽい曲が増えてきている特徴的。Zedd,
Iggy Azeria, A$ap Ferg, The Weekndなどの新らし目の人達をGuestに迎え、2010年代の感覚のR&B作になっている。Popな曲でも、スローでも溌剌として伸びやかなArianaのVocalの魅力はそのままで、音楽的地平を広げたアルバムといえそうだ。当面、若手版Mariah的立ち位置でやってけると思う。 |
Leela James / Fall For You |
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Leela Jamesの2年ぶりの5作目。前作がトリビュート物だったので、オリジナルとしては4年ぶりとなる。デビュー以来のOld Soul志向は、そのまま、ミディアム〜スロー中心の構成で、静かにしっとりと歌い上げている。デビュー時は若いのに渋いというGapによって注目されたところもあるが、30代になって年相応になったきて、より安定した唄いぶりである。Trackもわりとシンプルで、Guiterが耳に残る曲が多い。個々の曲のメロディが単純に良いのが最大の魅力だと思う。 |
Run The Jewels /RTJ2 |
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Killer MikeとEl-PによるユニットRun The Jewelsの第2弾。Mass Appealにレーベルを移してのリリースとなる。CDも売っているが、前作同様、公式にダウンロードが可能になっている。今回もEl-P全面Produce
で、タイトルが表しているように方向性はそのまま、コアでストレートなHip-Hop作品に仕上がっているし、Killer MikeのRapも冴えている。ただ、続きということで、驚きはあまりないが、それはいたしかたないところか。単体としては良く出来ているので、もっと聞き込んで楽しもうっと。 |
Prince and 3rdeyegirl / PlectrumElectrum |
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Princeと3人組の女性バンド3rdeyegirlによる共作。Princeソロ作との同時リリースであり、そちらにも3rdeyegirlは参加している。で、こちらはというとファンクロック作品。g+b+dsといバンドにPronceもgで参加しているが、どうも楽器はこれだけのようで、guiterメインの奇を衒わないストレートなロックになっている。vocalはPrinceがメインでバンドメンバーによる女性vocal曲やインスト曲もある。スタジオでの一発録りだったらしいが、4人とも演奏技術は高く、伸び伸びとしてまとまりの良い作品になっている。 |
Prince / Art Official Age |
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良作を作ってはいたものの、リリース方式では迷走気味だったPrinceのWarner Bros復帰作。4年ぶりの新作でもある。密室性の高い軽快なギターファンク主体のPrinceらしい作品で、それ以上でもそれ以下でもない。エレクトロを取り入れたようなTrackもあるが、全般的には、いつものPrinceで、各曲のQualityの高さもいつもどおり。同時リリースで共同名義になっている女性バンド、3rdEyeGirlがこちらにも参加している。 |
Kindred The Family Soul / A Couple Friends |
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フィリーの夫婦Duo, Kindred The Familyの3年振り、5作目。今回も安定感抜群のグルーブィーでソウルフルな作品を届けてくれた。Trackはバンド中心でオーソドックスなものが多く、ミドル〜アップののりの良い曲から、しっとりくるスローまで、曲に応じて緩急をつけるVocalはさすがベテランというところ。そのなかでもスムースなミドル曲はTrackともども素晴らしい。また、Hip-HopっぽくRapもとりいれた曲も後半に現れ、飽きの来ないつくりになっている。 |
Schoolboy Q / Oxymoron |
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Schoolboy Qの初フィジカル作にして、チャートでも好調なメジャーデビュー作。TDE制作でInterscopeからのリリースとなっているようだ。本人がInterviewで言っているように、Gangsta
Rapなアルバムだが、Gangsta礼賛というわけではなく、タイトルにあるようなそこにある矛盾をRapをしていたりする。そういうコンセプトなので、前作に比べ特に前半はストレートで物悲しい
曲が続く。後半に入ると、クールなTrackやFunkyなTrackなど、一工夫も合って、サウンド面でも、楽しめるようになる。Schoolboy
Qのフローは時に強気に、時にゆるくとつかみどころがないところが特徴的だ。 |
Mary J. Blige / Think Like A Man Too |
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映画、Think Like A Man Tooのサントラとインスパイア曲によって構成されるアルバム。Mary J. Bligeが全編唄っており、彼女のオリジナルアルバムと言えないこともない。そんな訳で、いつものMary作品同様のHip-Hop
Soul作に仕上がっている。サウンドはシンセを多用しつつも、冒険はあまり見られず、安定的。アップ〜ミディアムが多く、どの曲もレベルは高いが、これぞという一曲はないかもしれない。Maryの唄のほうは、かってのヒリヒリ感はやや影を潜め、気持ち良く唄っていて、イメージを変えつつあるような気もした。 |
Lupe Fiasco / Food & Liquor II: The Great American Rap Album Pt. 1 |
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年内に次回作がでると噂されるLupe Fiscoの2012年暮れリリースの4作目。デビュー作の続編としての扱いだが、レコーディング自体は2009-2012に行われたとのことで、次までの繋ぎのための未発表曲集的位置づけかもしれないが、意外に中身が濃く、しかも70分近くの大作となっている。他の作品に比べ、ダークな印象が薄く、全体的には前作のLaserほどではないがPopで、唄入りTrackはJazzyであったり、メローであったりと、とても聴きやすい。Producerが多数で、レコーディング期間が長かったにも関わらず、とっちらからずに聴き所があって、まとまりの良いアルバムである。 |
Sam Smith / In The Lonely Hour |
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今年(2014年)、ブレークを果たしたUK Soulの新星、London出身、21歳(リリース時点)のSam Smith のデビューアルバム。Disclosure,
Naughty Boyでの客演を経て、自身のSingleリリースからのアルバムリリースではチャートも賑わし、順調なスタートを切ったことになる。Accoustic
GuiterやPianoなど比較的シンプルなバンドサウンドをバックにしたソウル作品で、派手さは無い。ただ、スロー中心に、アップな曲も含めて、小細工がなく、楽曲のよさで勝負している。そして、何といっても特徴的なのは、やや中性的ながら、独特の張りのあるSam
Smithの唄声で、好き嫌いは別れるかもしれないがスローな曲では、ほんとに沁みてくる。これからの季節に丁度良い作品です。 |
YG / My Krazy Life |
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2009年にDef Jamとの契約を交わし、Young JeezyあらためJeezyのCTEよりめでたくリリースとなったYGのデビュー作。チャートアクションも好調のようだ。ともにPushers
Inkを形成するDJ MusterdがProduceの中心となっている作品で、シンセを多用し、音数を抑えた比較的シンプルながら、聴くうちに癖になるTrackが多く、メローな唄入りの曲が数曲、アクセント的に散りばめられている。Compton出身で、YGのabbreviationはYoung
Ganstaと、そっち方面の人ではあるが、Rapのほうは押すところと線が細いところがあって、掴みどころがない気がする。 |
Mariah Carey / Me. I Am Mariah...The Elusive Chanteuse |
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Mariah Careyの5年ぶりのアルバム。あまり不在感はなかった気がするが、この間に出産を経験し、母になってからは初リリースとなる。なお、親バカなことに9で、双子である自分の娘・息子をかなりフィーチャーしている。曲調的には、アップからスロー、オールドソウル、Gospelから、今風王道R&B作やHip-Hop
Soulと、かなり幅広くカバーされていて、かなり楽しめる。新旧、メジャーなProducer達によるTrackも、ひとつひとつ凝った、飽きさせないつくりになっており、尖がった面もあったりしている。VocalはいつものMariahだが、母としてのおだやかな側面も見える。Gusetの人選も良いし、丹念につくられた良作だと思う。 |
Common / Nobody's Smiling |
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Def Jamに移籍後初リリースとなるCommonの3年ぶり10作目。地元Chicagoへの恩返しを主眼としているらしく、Priducerも前作から引き続き、地元の盟友No.
IDが担っている。最近のCommonにしては、サウンド面で冒険していて、全体のトーンは不穏でざらつき気味。単一Producerの作品にしては、Trackは多様でSoul,
Gospel, Afroにメローな曲と楽しめる。豪華ということはないが、多数のGuestを呼んでいて、結果的にバラエティには富んだ作品になっている。その分、Common色は薄まった気もするが、これはこれで悪くないと思う。 |
R. Kelly / Black Panties |
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R. Kellyの約1年半振りのアルバム。ここ2作はオールドソウルの佳作が続き、曲作りの才能も発揮してきたのだが、久々に定番の性愛路線に戻ってきた。そっち系の単語を連呼するので、聞いているこっちが恥ずかしくなってくるが、美メロにところどころAutotuneを使ったVocalでストレートに歌い上げてくるところには、信念を感じる。Co-Produceながら、自身以外の、ほぼ無名なProdicerを多用しているのは珍しく、Trackもそれなりに今風になっている。 |
Traxman / Da Mind Of Traxman Vol 2 |
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Footwork/Jukeの重鎮、Traxmanの前作からの続編となる2年振りのアルバム。2年と間が短く、続編ということも合って、大きな変化はみられない。スネアが強調された打ち込み主体でサンプリング少々という作りである。強いて違いをあげれば、挙げれば、声がより、使われるようになっていて、パッカッション的な使い方もあり、Vocalとしての唄も少し有りと多様になっている。また、全体的にではあるが、Trackがシンプルになった気もする。スピード感、ビートの洪水、カオスなんてことばが合いそうな作品である。 |
Meshell Ndegeocello / Comet, Come To Me |
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Meshell Ndegeocello、2年ぶりの作品。今回もジャンルレスな佳作だが、いつもよりは、若干、聴き易い気がする。Reggae, Rock,
Pop, R&Bなどを偏りなくミックスしたような楽器中心のサウンドは音数少なく、静謐で茫洋としていて、独特の音楽観を持っている。上にのっかるMeshellの落ち着いたVocalはクールで官能的でもある。もちろん、Trackとの相性も良く、統一感の高いアルバムとなっている。 |
Randy Valentine / Break The Chain |
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Jamaica出身でUK在住のRaggae Singer/DJ Randy ValentineのEP。itunesやamazonからのダウンロードのみでの提供となる。本人もSong
WritingやProduceも行うようで、スイス録音でスイスのレーベルからのリリースとなる。生楽器主体のTrack にルーツ、ダンスホール、ロックステディなどと作りはあくまでもReggaeだが、UKらしくダブの要素がMixされていて、洗練された印象も受ける。高めの声による唄も幅広い表現力があると思う。 |